アメリカ村からタワーレコードがなくなった日

コーハマです。

シティバンクとヴァージン航空という大手外資系企業が日本から撤退というニュースが相次いで飛び込んできた。事業における日本の”相対的な地位低下”というところが撤退の主だった理由だそうな。

このニュースを受けて大阪でのとある出来事を思い出したんです。

 

 

アメリカ村タワーレコード閉店

大阪は難波・心斎橋にあるアメリカ村(以下、アメ村)はその昔、大都市圏にあって猥雑でヒッピー文化みたいな一種独特な雰囲気をまとった街として知られていた。

東京で言う下北沢みたいなところである。

2006年8月、そんなアメ村の一つの象徴として存在していたタワーレコード心斎橋店が閉店した。

「アメ村からタワーレコードが無くなる」という知らせを聞いた時、僕は18歳くらいだったと思う。

参考:

ゴリモンな日々 | 閉店直前のタワーレコード心斎橋店へ

★タワーレコード心斎橋店閉店・・・ - 気ままに一言・・・その2

 

高校生だった当時の僕は、月に数回、なけなしのお小遣いをはたいて古着や輸入版のCDをアメ村で買い漁るという生活を送っているような少年で、青春時代の大切な時間の断片はアメ村での思い出が多くを占められている。

アメ村という場所は、私立高校の真面目な空気に退屈し切っていた僕にとって常に刺激的な場所で、道行く人の服装や髪型、流れている音楽やシャッターの落書きに至るまですべてが日常から離れたところにある感じがした。

「あそこに行けば何か新しいことがある」という気がして、旅行をする感覚で足を運んでいた。

街に魅了されていたのであった。

 

そんな中で高校時代を過ごしていたのだが、上述の知らせが耳に入った。

教えてくれたのは当時入り浸っていた洋服屋さんの人で、そのお店はアメ村に20年以上あった老舗だ。

彼曰く、タワレコが手を引くのはアメ村界隈から人が減りつつある状況を受けてのことだという。その頃、近隣の梅田の再開発などが始まり、主要路線から少し外れた位置にある難波や心斎橋の人の流れが今後逓減するだろうと言われていた。

”相対的な地位低下”という言葉がばっちりはまる状況である。

 

そのことを教えてくれた彼はとても寂しいそうに続けた。

タワレコ撤退に焦っているのは昔からある服屋とか雑貨屋。シンボル的なタワレコシノギが見込めなくなると言ってんだから将来は不安だ」

それは数十年を過ごした”住人”から見ても明らかな時流の変化だったそうだ。

 

”相対的な地位低下”から変わったこと

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↑かつてのタワレコ心斎橋店。現在は「まんだらけ」になっている

 

その後、梅田を始めとする北エリアの開発が進むのと反比例するように心斎橋界隈は少しずつおとなしくなっていったように思う。

古着屋のテナントはきれい目なブティックにすげ代わり、これまたシンボル的存在だったLOFTも閉店。有名なライブハウスも梅田の方へと移転するという事態が続いた。

行き交う人も以前とは変わり、なんとなく普通の身なりの人が多くなった印象だ。

それまで街に充満していた雑多な空気が少し軽さを持ったようである。

 

諸行無常とは言うが、アメ村の持つ希有な空気感はとても貴重でいくら時代のオーダーとは言えとても寂しい気持ちに僕はなった。

 

アメ村の話と今回のニュースは、規模感も違えばビジネスの領域もまったく違う事柄なので横に並べて「どうだ」と問うことは難しいんですけど、”気運”みたいなものが流れる発端という意味では共通している部分だと思う。

 

ある一つの事柄が現状を反映しているなと感じることは比較的身近だと思うんですが、それとは別にその事柄が他の事柄に影響を与えるということがあるというのが、アメ村の例から考えられると思うんですよね。

 

タワレコが撤退する、だからうちの店もヤバいんじゃないか

という人が出てきて

最近、昔の店が減ってきて行く店がなくなったから別の場所に行こう

というお客が出てきて

人の流れが減ったからうちも引き上げようか

という流通企業が出てくる…

 

 

再帰性”というんでしょうか、先立っていた不安が本当に恐れていた事柄を引き起こすという現象が確かにあるとアメ村のタワレコから学べたと思うんですよね.

 

大したニュースではないけど”撤退”という言葉にはちょっと敏感になってしまう僕でした。

 

 

 

 

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 ↑懐かしいな〜