中川淳一郎「夢、死ね!」を読んだ 死ななくてもいいけどきっちりちゃんと仕事しろという話
コーハマです。
中川淳一郎さんの著書を読んだ。
以下、AMAZONの紹介文より抜粋
現在の日本は「夢」がやたらと優遇されすぎている。だが、夢を追い続けてきた結果、悲惨な目に遭った人々を私は散々見てきた。ミュージシャン、お笑い芸人、作家、司法浪人生、国家公務員試験受験生、学者、アーティスト、芸能人、起業したい人、フリーランスで自由に働きたい人―夢を簡単に煽って欲しくないのである。彼らがどんだけ「夢を持て」といったことばに騙されて悲惨な人生を送っているか! 本書で語るのは、そういったおとぎ話を真っ向から否定する、地に足の着いた仕事論である。
ご覧の通り、本書では安易に夢を語る人や夢を追うあまり人生をこじらせている人に対し警鐘を鳴らし、「うだうだ言ってないで仕事しろよ!」という主旨のメッセージを発している。
ただ、他の多くの自己啓発本を逆手に取ったポジショントークで「夢、死ね死ね死ね」と全編に渡って主張している訳ではなく、「実際こうなんだぜ」と仕事の内実を絡ませながら説得的に(時にやけっぱちに吐き捨てるように)語られている。
著者の主張としては
- 夢ではなく目標を持て
- 夢には締切を設けろ
というもの。
夢という表現はあまりにぼんやりで、それ故、人を際限なく引きつけてしまう上に夢見る人を騙す甘い汁にもなる危険性が含まれている。
だから”夢”を持つならある程度見極めの時期を事前に設定しておく必要があるし、なんなら”夢”ではなくもっと現実世界で達成すべき”目標”をセットすることに意識を向けようと言っている。
言うなれば、現実社会の成り立ちやそこに存在する厳しさを親戚のオジサン的な立場から説かれているような、そういった内容である。
ピカピカ大企業を27歳で辞めてフリーランスになってから冷や飯を食わされまくった著者の弁なので説得力がある。
また、仕事に対しては
- 仕事の本質は「怒られないようにすること」
- 確実性があって信頼のおける人に結果的に仕事が舞い込む
- 与えられた仕事は断らないこと
というような主張が並んでおり、物事をはかる尺度に”夢”を引っ張り出す人の考えるところと現実が如何に乖離しているかについて論じられている。
特に「雑誌を作りたい」と熱く語る学生をライターとして著者が雇った際に”クリエイティビティ”云々を引き合いに出して著者たちがブログで糾弾され仕事も蔑ろにされたエピソードなんかは確かに頂けないなぁと感じた。
内容を読むと『夢、死ね!』というタイトルはある種のアイキャッチで、至極真っ当な仕事論だという印象を受けた。
目標を自己設定できる人はやっぱり強い
最初の主張の時点に戻ると、夢見勝ちな人というのは目標がぼんやりした状態がだらだら続いている人なのかもしれない。
”夢がある”というだけで何者かになれた風に振る舞う人が確かにいるし、それを助長しやすいSNSの存在なんかもあって夢をこじらせやすい環境が整っているのも難儀である。
本書を読んで、如何に目標を立てられるかが何よりも大切な命題だと感じた。
僕の浅い社会人経験の中で恐縮だけど僕が見た”仕事ができる人”というのは共通して目標設定が無意識のうちにできている人のように映った。
ある人から「『ウサギとカメ』の話でウサギが負けたのはなんでだと思う?」と聞かれたことが会った。
「寝てたからでしょ?」と応える僕にその人は「ウサギはカメを見て安心したから寝たんだよ。カメはウサギがいようがいまいがゴールすることが目標だったから勝ったんだ。自分で設定した目標に対して全力出した結果勝ったんだよ」と。
いかにもフェイスブックとかでシェアされた的な”いい話”の様相を呈しているが、確かにこれは一理ある。
自分はこれがしたい
→そのためにはこのくらいのレベルの仕事をしないといけない
→だから今これをする
夢を持ってなくても凄い人は上記の思考プロセスの上に行動を起こしているし、もともと夢ありきで頑張ってきた人だけじゃなくてこういう自律型の人が結果的に成功したというケースも案外多いと思う。
夢を叶えるという行為がコントロール不可能なものと割り切った上で「ではどうするか?」を考えた時にまず仕事ができるようになること。
そして、できる人には仕事が集まるという原理に従って仕事をするうちにチャンスが自ずとやってくる、というところに本書のメッセージがあると思う。
『夢、死ね』というメッセージをもう一段階ブレイクダウンすると『今、あなたの目標はなんですか?』というところに落ち着くのだ。
これは超真面目な本なのです。
またぞろ偉そうなことを宣ってしまった。
『サラリーマン合気道』
しかし博報堂出身者の本はサラリーマン然としたものが多いな